浜松医科大学内科学第二講座 人を知る 呼吸器内科 専門医(臨床)

「命の恩人」の背中を追って
進んだ、医療への道。

呼吸器内科

鈴木 貴人医師

浜松医科大学 2012年卒

学会発表のようなプレゼンに感銘。

気管支喘息で闘病してきたのが、医師を目指すきっかけになった。幼少期は重度の喘息発作を繰り返しており、幼稚園のころから入退院を繰り返していたという。しかし、成人後は趣味でフルマラソンに挑戦できるまでに回復。その陰には、小学生から中学卒業までずっと親身になって治療に当たってくれた主治医の存在があった。「病気のことだけでなく、勉強のことなどいろいろな相談に乗ってくれたやさしい先生で、僕にとっては主治医であると同時に人生の恩人でもあるんです」。そんな恩人の背中を追いかけるように、鈴木は主治医と同じ大学の医学部に入学。名実ともに“後輩”となった。「学生時代は、呼吸器内科の他に小児科という選択肢も考えていたんです。僕自身、子どもの患者としてずっと病気と闘ってきましたから、きっと同じような患者さんの力になれるんじゃないかって」。

しかし、実習で浜松医科大学の第二内科を回った時に出会った指導医や医局員の存在が、鈴木の心を大きく動かした。「指導が手厚い、というと月並みですが、呼吸器内科は比較的たくさんの医師が所属している医局ということもあって、さまざまな経験を積んでいる先生が多いんです。カンファレンスも参加している医師の層が厚いので、まるで学会発表のような質の高いプレゼンが行われており、とても心強く感じました」。
成長への手応えを感じた鈴木は、同期の誰よりも早い初期臨床研修の2年目で、第二内科呼吸器内科への入局を決めた。「その後、僕の学年からは7人が入局して、助け合ったり苦労を分かち合ったりしながら切磋琢磨しています。入局して8年になりますが、実習で感じた医局員の層の厚さは、やはり呼吸器内科の一番の魅力ですね。関連病院とのつながりが非常に強いこともあり、共に働いたことのない先生とも学会などで交流があります。そういった先生方から意見を頂戴することで、医師として成長している実感があります」。

オンとオフは明確に切り分ける。

「初期研修終了後は、静岡県立総合病院で後期研修医として3年間学び、スタッフとしても1年間の勤務をさせていただきました。その後、再び静岡市立静岡病院に移って1年間勤務し、8年目となった今年度から浜松医科大学に戻ってきました」。市中病院での勤務では、多くの受け持ち患者さんを通じて臨床経験を積むと同時に、積極的に学会にも参加。サンフランシスコで開かれた国際学会で発表の機会を得たのは、ちょっとした誇りだ。現在は大学に戻ったばかりということもあって、基本的には入院患者の診療が勤務の中心だ。回診、検査結果の確認、治療方針の決定、患者さん、ご家族との面談など一般診療を行いつつ、治験や臨床研究への参加の協力依頼や評価なども並行して行う。曜日によっては、カンファレンスの準備や気管支鏡検査もあり、忙しい日々だ。「希少な腫瘍をもった患者さんを担当させていただいたことが最も強く印象に残っています。治療法が確立していない腫瘍でありましたが、さまざまな文献を検索し、選択した治療によっていったんは寛解状態まで持っていくことができました。結果的には再発してしまいましたが、治療効果が得られた時には、患者さんと共に喜んだ記憶があります」。

休日は家族と買い物に出かけたり、公園を散歩したりして過ごすという鈴木。「時間に余裕があれば遠出をすることもありますが、まだ子どもが小さいので近くの公園でのんびり過ごすことが楽しみの一つです。呼吸器内科では土日を当番制にしているので、休みに呼び出しが来るということはほとんどありません。なので、なるべく家庭には仕事は持ち込まない。これが僕のリフレッシュの秘訣です」。

さらに上のレベルで医療に貢献したい。

理想の医師像は、患者さんに寄り添い、患者さんと共に病気を克服していける医師だと語る鈴木。もちろん、それは彼が医師を目指すきっかけとなったかつての主治医の姿が根底にあるが、第二内科に入局してから出会ったさまざまな医師──先輩も同僚も後輩も──との出会いを通じてなお、変わらない目標でもある。

「今年は大学に戻って1年目なので臨床がメインですが、大学病院ならではの多数の背景疾患を併存した患者さんの診療や希少症例の担当のほか、臨床研究や治験など、今後の医療を担う仕事も任せていただいています。今はまだテーマを決めていないのですが、呼吸器内科では2年目の秋からは研究1本に絞ることができますので、基礎研究を通じて今は治せない病気──がんをはじめ、間質性肺炎や肺気腫の治療に向けて、さらに上のレベルで医療に貢献できたら、と考えています」。

MESSAGE

僕も入局前は非常に悩んでいました。フリーとして自分の好きな道を進んでいくのも非常に魅力的ですが、医局入局によって得られるものは少なくありません。多くの先生とのつながりにより、医師として人間として自分を磨けること。そして臨床だけでなく、さまざまな経験を共有できるため、多様な視点から医療に携われること。第二内科は科の雰囲気が非常によく、スタッフ人数や関連病院も多いので、非常に働きやすい環境です。皆さんと切磋琢磨できる日を楽しみにしています。
取材:2019年6月