浜松医科大学内科学第二講座
人を知る
女性医師が語る第二内科の魅力
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内科学第二講座 女性医師座談会
女性医師が語る第二内科の魅力
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後藤先生呼吸器内科所属
浜松医科大学2012年卒
聖隷三方原病院に勤務。2歳になるお子さんの育児中なので、現在夜間と休日勤務からは外れている。かつて親族が事故に遭った際に、女性医師の存在意義を感じて医師を目指したという。呼吸器内科の魅力は、アレルギーやがん、感染症といった幅広い疾患に対応できることと語る。
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坂本先生内分泌代謝内科所属
岩手医科大学2015年卒
入局3年目で、現在は大学病院にて通常勤務。結婚や家庭を持つことはまだ現実味がないが、素敵な家庭を築いている先輩がたくさんいるので、いずれはその後に続きたいと考えている。内分泌代謝内科は甲状腺疾患や妊娠糖尿病など女性の患者も多いため、やりがいを感じている。
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山下先生肝臓内科所属
浜松医科大学2012年卒
今春より大学院に進学したが、3カ月前に第一子を出産して現在は育休中。子どもが生後半年になるのを機に、まず大学病院のスタッフとして復帰し、翌年春に大学院に復学する予定。消化器内科医は、薬の力だけでなく内視鏡による検査や処置などできることが多いことが魅力だという。
厚生労働省の統計によると女性医師は近年ずっと増加傾向にあり、2018年時点では約21%を占めているという。もちろん、浜松医科大学でも多くの女性医師が活躍しており、結婚や出産、育児といったライフイベントを越えて仕事と家庭を両立している医師も少なくない。そこで子どもの年齢や家族構成の異なる3人の女性医師に、「女性医師の活躍のリアル」を語ってもらった。
第二内科と女性医師
“ 女性の活躍するシーンが増えているという実感はある ” ― 後藤
本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
早速ですが、皆さんは普段職場で「男女差」を感じることはありますか
早速ですが、皆さんは普段職場で「男女差」を感じることはありますか
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後藤
男性医師との違いということですか? 特に意識したことはないですね(笑)。
私が呼吸器内科医になってから、常に同僚として女医さんがいましたし、他の科にも子育てしながら仕事をしている方がいましたし、男性も女性も変わらないと思います。でも近年、女性の活躍するシーンが増えているという実感はありますね。
私が呼吸器内科医になってから、常に同僚として女医さんがいましたし、他の科にも子育てしながら仕事をしている方がいましたし、男性も女性も変わらないと思います。でも近年、女性の活躍するシーンが増えているという実感はありますね。
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坂本
私も意識したことはありませんね。内分泌代謝内科はもともと女性比率が高くて、たぶん3割くらいは女性なんです。
科長を務めている先輩もいらっしゃるので、キャリアという点でも特に女性だから……と感じたことはないですよ。
科長を務めている先輩もいらっしゃるので、キャリアという点でも特に女性だから……と感じたことはないですよ。
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山下
消化器内科って、緊急対応が多いハードな職場という印象があったり、内視鏡のような機械を使ったりもするので、男性的なイメージを持たれがちなんですよ。でも実際は、手に職を付けたいって頑張っている女医さんも結構います。
女性医師が増えているという実感がある、というお話がありましたが、実際に女性の医師は増加傾向にあり、2018年時点では約21%を占めるというデータがあります。その理由を皆さんはどう考えますか?
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山下
それは難しい質問ですね(笑)。男性の先生と女性の先生で医療に違いが生じることはないと考えていますので。
でも自分が病気になったときには、できれば女性に診てもらいたいと思ってしまうかもしれませんね。
男性の医師がイヤなんじゃなくて、女性だったらうれしいなって。
でも自分が病気になったときには、できれば女性に診てもらいたいと思ってしまうかもしれませんね。
男性の医師がイヤなんじゃなくて、女性だったらうれしいなって。
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坂本
外来の患者さんでも、女性のお医者さんで良かったって言ってくださる方はいますね。
内分泌代謝内科は、甲状腺に関わる疾患や妊娠糖尿病など女性の患者さんが多いので、そういった意味では女性医師の需要は高いといえるかもしれません。
内分泌代謝内科は、甲状腺に関わる疾患や妊娠糖尿病など女性の患者さんが多いので、そういった意味では女性医師の需要は高いといえるかもしれません。
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山下
患者さんから男性がいい、女性がいいという言葉を聞いたことはないけれど、消化器系だと大腸の内視鏡検査などもありますし、診てもらうなら同じ女性の方が安心できる、いろいろ話しやすいということはあるんじゃないでしょうか。
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後藤
中には余談が弾み過ぎて、それだけで診療時間が終わっちゃうよ!って患者さんもいらっしゃったりしますね(笑)。
また現場では、コメディカルの方も女性が多いので、同じ女性同士の方がコミュニケーションを取りやすいと感じることがあります。
また現場では、コメディカルの方も女性が多いので、同じ女性同士の方がコミュニケーションを取りやすいと感じることがあります。
職場環境が改善されているなど、女性医師の増加を後押ししている要因もあるのでしょうか?
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坂本
設備に関して言えば、病院って、もともと看護師さんをはじめ女性スタッフがたくさんいる職場なので、女性が苦労することはそんなにないですよね。大昔は更衣室がなくてトイレで着替えていた、なんて話を聞いたことがありますけど……。
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山下
肝臓内科でも、女子更衣室もあるしロッカーもあるし、困ったことはないですね。
後藤先生は市中病院で勤務されていますけど、いかがですか?
後藤先生は市中病院で勤務されていますけど、いかがですか?
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後藤
私の勤務している病院でも女性用の設備は充実していますよ。むしろ、カーテン仕切りの向こう側で着替えている男性医師よりも恵まれた状況かもしれません(笑)。昔は結婚、出産で家庭に入る方も多かったと聞きますけれど、今はこうして働きやすい環境が整ってきているので、女性にとっても医師はずっと続けていける仕事になっていると思います。私の周りでも同級生はみんな辞めずに残っていますし、今後もキャリアを重ねる女性医師は増えていくんじゃないでしょうか。
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女性医師とライフイベント
“ 自分の頑張りだけではダメ。周りのサポートのお陰で今がある ” ― 山下
後藤先生と山下先生はお子さんがいらっしゃいますが、育児と仕事の両立で大変だと感じることはありますか?
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後藤
私は2歳になる子どもがいるんですけれど、職場のみんなや家族など周囲の方々にすごく協力してもらっているお陰で、仕事中に不自由を感じることはほとんどありません。とはいえ、今は夜間対応できなかったり、患者さんとの面談設定が限られたりといった制限がありますし、子どもが熱を出した、なんていうときには両親の力を借りたりということもあるので、感謝するとともに申し訳ないなって気持ちはありますね。
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山下
私は子どもがまだ3カ月なので産休中なんですが、妊娠初期のつわりが大変だった時や、出産間際でからだがつらかった時に、病棟の先生や医局の先生にはすごく助けていただきました。当直や待機を減らしてくれたりと、いろんなことに配慮してくれて。妊娠中は、自分の頑張りだけではどうしてもダメなことがあるんですよね。そこをみんなにサポートしていただいたお陰で今があるって思っています。
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後藤
復帰時期はもう決めていますか?
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山下
(子どもが6カ月になる)10月くらいには復帰できたらなって思っています。
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坂本
早くないですか?
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山下
長らくカメラ(内視鏡)を触っていないので、できるだけ早く感触を取り戻したいなと。ただ、いきなりフルタイムの勤務は難しいので、たとえば最初は検査の日だけの出勤にさせてもらったりして、少しずつ慣れていけたらと思っています。後藤先生はどのくらいで復帰されたんですか?
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後藤
私は子どもが1歳になるちょっと手前くらいからでした。ただ、呼吸器内科の場合は部分的な復帰が難しいので、病棟勤務と外来勤務は普通に入って、夜間は外すというシフトにしてもらっています。
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坂本
これまで気にしたことがなかったんですけれど、産休の期間や復帰時期は、大学で決まりがあるんですか?
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山下
特にないと思いますよ。私はちょうど今年から大学院に入ることになっていたので皆さんとはスケジュールが違うかもしれませんが、特に大学側からの指示や強制はありませんでした。まずこちらから要望を伝えて、それに合わせて調整してもらうという形だったので、不便や不安はありませんでしたね。
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坂本
内分泌代謝科にも、今も全力で子育てしながら仕事も頑張っている先輩がいっぱいいます。そんな姿を見ているとカッコいいなと感じますし、いつか自分もそんなふうに仕事と家庭を両立させられたらいいですね。
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女性医師をもっと輝かせるために
“ 私たち女性医師自身の意識改革も必要かもしれない ” ― 坂本
後藤先生と山下先生は産休・育休の経験者として、坂本先生はそれをサポートする同僚としてのお話を聞かせてくださいましたが、女性医師の活躍する場面をさらに増やしていくためには、どんなことが必要でしょうか?
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山下
これからの話で言えば、産休や育休から戻るためのサポートをもっと充実させていければと思っています。消化器内科に限らないと思いますが、しばらく現場を離れてしまうとどうしても不安になってしまいますよね。手技はもちろん、休んでいる間に医療ガイドラインが変更されたり、新しい薬が出てきたり。置いていかれちゃうという心配を抱えがちです。
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後藤
確かにそうですね。私の時も、ちょうど免疫治療が大きく進歩した時期と当たってしまって。1年休んでいたら状況が大きく変わってしまっていて、気持ち的にはまた最初からスタートしたようなものでした。今も先ほどお話ししたようにまだフルタイムでは働けていないので、仕事面だけ見れば、もっとやりたいという思いはあります。
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山下
患者さんの命を預かる仕事である以上、復帰したてだからという甘えは許されません。だから、長期間休んだ後でも自信を持って診療ができるように、休職中のサポートが充実していくといいと思っているんです。大学ならいろんな先生がアドバイスして指導できるので、みんながそういったサポートを受けられるようになれば女性医師の活躍はより増えると思いますし、休職中の不安を減らせるように、知識をアップデートできるような機会があるといいですよね。
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坂本
今は、復帰に向けてどんなプロセスがあるんですか?
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山下
肝臓内科だと処置日が決まっているので、その中で指導してもらってだんだん遅れを取り戻せるようになっています。
たぶん、呼吸器内科も内分泌代謝内科も同じですよね?
たぶん、呼吸器内科も内分泌代謝内科も同じですよね?
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後藤
呼吸器内科も、できることから始めていこうというスタンスです。細かいプロセスは違うと思いますが、個人個人の都合に合わせた復帰プログラムを組んでくれるはずです。
そして何より、職場のサポートは必須です。子育ては突然のことが起き得るんですよね。子どもが病気になって、今日は病院に行けないなんてこともあります。そんなときに備えて、うちでは毎朝部長が仕事をより分けて、来られなくなった人がいたら場合のサポートを決めてくれています。同僚に申し訳ない気持ちはありますけれど、それを考え過ぎると仕事自体ができなくなってしまうので、「お互い様だから」と自分に言い聞かせて、割り切るようにしています。
そして何より、職場のサポートは必須です。子育ては突然のことが起き得るんですよね。子どもが病気になって、今日は病院に行けないなんてこともあります。そんなときに備えて、うちでは毎朝部長が仕事をより分けて、来られなくなった人がいたら場合のサポートを決めてくれています。同僚に申し訳ない気持ちはありますけれど、それを考え過ぎると仕事自体ができなくなってしまうので、「お互い様だから」と自分に言い聞かせて、割り切るようにしています。
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坂本
そんな、「申し訳ない」なんて思わないでほしいです!
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山下
確かに、当事者になってしまうと「申し訳ない」という気持ちばかりが先に来てしまうんですよね。でもそうやって子育てしながら仕事をする女性医師が増えてくれれば、「次は助けるから、今は助けてね」っていう、自然な相互関係を築きやすいですよね。
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坂本
今日、こうして初めて妊娠・出産・育児と頑張っている先輩たちの本音を伺ったような気がします。率直な気持ちとしてはもっと頼ってほしいし、相談もしてほしい。他の先生も、頼ってもらえれば全力でサポートしたいと考えていると思います。たぶんお二人も独身時代は私と同じ思いだったと思いますので、私たち自身の意識改革ももっと進めていかないといけないのかもしれませんね。
これから仲間になるかもしれない
皆さんへ
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山下
最近、やっとベビーカーが使えるようになったので、児童館に行って絵本の読み聞かせをしたりするようになりました。
ずっと家にいると精神的にも良くないので、ちょっとずつですが外へ出かけるようにしています。
ずっと家にいると精神的にも良くないので、ちょっとずつですが外へ出かけるようにしています。
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後藤
うちは、毎週のように動物園かフラワーパークに行っていますよ。子どもにせがまれて(笑)。
今は土日の当番・当直を外してもらっているので、家族との時間は以前よりも十分取れているくらいです。
今は土日の当番・当直を外してもらっているので、家族との時間は以前よりも十分取れているくらいです。
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坂本
大学病院は当番制なので、非番のときはゆっくりできるのがいいですよね。
勤務先によっては非番でも呼び出し対応があるかもしれないので、仕事を完全に忘れてリフレッシュすることが難しいですし。
勤務先によっては非番でも呼び出し対応があるかもしれないので、仕事を完全に忘れてリフレッシュすることが難しいですし。
今、入局を考えている研修医の方にお伝えしたいことはありますか?
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坂本
第二内科は女性の先輩がたくさんいます。
女性医師が活躍しやすい環境だと思いますから、ぜひ一緒にがんばりましょう!
女性医師が活躍しやすい環境だと思いますから、ぜひ一緒にがんばりましょう!
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山下
男女関係なく、どの専門科もアットホームで、いい先生が多いのが第二内科の特色です。
あなたが憧れられる先生を見つけてください。
あなたが憧れられる先生を見つけてください。
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後藤
女性医師の人数が増えれば増えるほど、協力体制も築きやすいし、お互いに助け合えるから気がねもなくなります。
女性がさらに働きやすい第二内科を、一緒につくっていってもらえたらうれしいですね。
女性がさらに働きやすい第二内科を、一緒につくっていってもらえたらうれしいですね。
取材:2019年6月